チンパンジーえにっきイメージ

岡山県玉野市にあった類人猿研究センター(GARI)で研究のパートナーとして暮らしていたチンパンジー8人。
彼らのようすを、写真を添えてつづってきた2004年8月から2013年3月までの「えにっき」の記録です。

2012.10.3 「"ヒト"としてできることは何か?」

類人猿研究センター(通称GARI)の存続が危ぶまれてからというもの、内部ではさまざまな動きがありました。 スタッフも減りました。毎日がバタバタと過ぎていくその中で、「ここにいるチンパンジーは何としても守りたい!」私たちはその一心で、チンパンジーとは変わらず丁寧に接してきたつもりです。

「ヒトとは何か。ヒトの現在と未来はどうあるべきか」といった大きな問いにアプローチすることを目的として、ヒトに最も近縁な種であるチンパンジーとヒトとを比較しながら研究をおこなうため、5人のチンパンジーがやってきました。今からおよそ13年前のことです。
(下写真:左から2000年1月のツバキ、ジャンバ、ロイ、ミズキ)

2000年1月の(左から)ツバキ、ジャンバ、ロイ、ミズキ

GARIでは、チンパンジーを研究や教育活動のパートナーとして位置づけ、丁寧に接することで信頼関係を築いてきました。
危険動物であるチンパンジーと対面して交渉する直接飼育は、GARIの飼育の特徴のひとつと言えます。

ヒトの何十倍もの力があり、攻撃的な一面を持つチンパンジーと直接かかわることは、大きな危険が伴います。しかし、直接かかわるからこそ見えてくるチンパンジーの一面があります。
直接かかわるからこそ、可能になった研究もあります。

信頼関係を築き、安定した対面をおこなうために、13年間、私たちは毎日毎日繰り返しトレーニングを続けてきました。
この先、スタッフとの対面をやめてしまえば、おそらく今のように安定して人とかかわることは難しくなるでしょう。
「信頼関係」という目に見えない価値は、ひとたび失ってしまったらお金で買うことなどできません。

理想の研究・教育や飼育を目指し、日々、丁寧に接することで信頼関係を築き、今ようやくスタートラインに立ったところでした。
私たちが彼らから教わることは、まだまだたくさんあったはずです。

たった13年でGARIが終わりを迎えようとしていること、何より人の都合に付き合わせてしまった8人のチンパンジーのこれからのことを考えると、正直、今は、やりきれない気持ちでいっぱいです。

でも、まだあきらめたくはありません。この先どうなるのかわかりませんが、最後まで丁寧に彼らと接し、少しでも彼らのことを理解できるよう精一杯努力するつもりです。

せめて、ロイ、ジャンバ、ツバキ、ミズキ、ミサキ、ナツキ、ハツカ、イロハというGARIの8人のチンパンジーのことを、遅ればせながら、少しずつでもみなさまにお伝えしていければと思います。
(下写真:左から2000年5月のロイ、ツバキ)

2000年5月のロイ(左)とツバキ(右)

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